スポーツギターの概念

一般的なスポーツギター以外の話

『ニシノユキヒコの恋と冒険』きゅんきゅんショーケースの概念

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『ニシノユキヒコの恋と冒険』監督:井口奈己 122分

新宿のバルト9の深夜回で観てきました。

お客さんは深夜ということもあって、あんまり入ってなかったですね。観る前に盛大にコーラをこぼしてしまい、係員の方にはご迷惑をおかけしました。本当にすみません。

ただ言い訳ですが、なかなかコーラとポップコーンを両手に持ちながらチケットを渡したりするのってなかなか難易度が高い行為だと思うので、なんか落としたり傾けてもこぼれないような容器になるとすごく良いんじゃないかと思います。

 

それはさておき、原作は川上弘美さんでの同名小説で、数年前に読んだことがあります。

また、川上弘美さんは割りと好きな作家さんなので、『蛇を踏む』とか『真鶴』とか『神様』とか『溺レる』とか『センセイの鞄』なんかも思い返せば読んでますね。

ただ好きな作家さんではあるんですけど、読んで数年経つとほぼほぼ内容を全て忘れてしまうという稀有な作家さんとして概念の中では位置づけられています。なので今回の作品についても、見終わった後にそういえば読んだことがあるかもというくらいの感じで、完全に内容は忘れておりました。。。

しかも読んだ場所は覚えているんですけど(旅行中のタイで読んだので覚えていました)内容はいくら思い出そうとしても、映画を観た後でもまったく思い出せません。

 

はい。

そんな感じで映画の話に移ると、原作は先ほども述べたように川上弘美さんの『ニシノユキヒコの恋と冒険』ですが、監督は前作『人のセックスを笑うな』がスマッシュヒットした井口奈己監督です。

この監督の特徴としては、まずかなり長回しを多用するという点が挙げられます。しかもカメラを移動させながらの長回しではなく、カメラを固定させた状態での長回しです。

この撮影方法については、一歩間違えるとかなり退屈になりがち、というか今回の作品でも他の方のレビューを見る限りつまらない、退屈と言っておられる方のほとんどの方の理由はここに起因しているような気がします。

 

なんですけど、個人的な感想を先に言ってしまうと、かなり面白かったです。

その理由を簡潔にまとめると、「動かす工夫」がされているということになります。

まず前提としてなんですけど、カメラ固定の長回しということは、当たり前ですが画面がまったく動きません。

なので、登場人物を「動かす」しかないんでけど、この工夫がすごく意図的にされていると思います。

たとえばなんですけど、この映画、観ていてやけに上下運動を行うシーンが多いですよね。坂・エレベーター・エスカレーター・階段など、登場人物が上下運動を行う舞台が多いです。むしろ平坦な移動と半分半分くらいじゃないかってくらい多いです。しかも、この上下運動を行う場面は、まったく同じ場所で別アングルが使われていることも多い。

つまり、人が上から下に、下から上に動作を行うことによって、固定された画面の中で単純に登場人物に「アクション」をさせる工夫を施すと共に、まったく同じ場面の構図の切り替えによって、観ている人に分かりやすく登場人物の心情や環境の変化を伝えている、すごく映画的な工夫がなされていると思います。

この映画、固定の長回しの割にはそんなに登場人物がしゃべりまくったりするわけではないんですけど、画面の工夫によって雄弁にそのシーンの意図を伝えていると思います。

 

あとはとにかく登場人物が魅力的でした。元々この映画を観に行った動機が最近ハマっている尾野真千子さんの演技をスクリーンで観たかったからなんですけど、それぞれのシーンでどの登場人物も緊張感が出ていて良かったですね。

後からパンフを読むと、撮影の中でなかなか監督からカットの声がかからず、「まだか、まだか」と思いながら演技をしていたそうなので、その感じが出ていてすごく良かったです。

正直見終わった直後よりも今のほうが評価が高まっている気がする不思議な映画ではありますが、それは一重に私が「男1人と複数の女性」というシチュエーションが大好きだからという理由も添えておきます。

女性が観て云々という宣伝文句も聞きますが、男性がみてもきゅんきゅんする映画なんじゃないかと。

なのでここはあまり難しいことは考えず、単純に一個一個の長回しの舞台の中で、多種多様なきゅんきゅんシーンが観られると思って観に行かれてはいかがでしょうか。

あー竹野内豊みたいにスポーツカーの助手席を飛び越えたい。。

 

お疲れ様です。